第1章 夜

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何分歩いたかわからないがまっすぐに続く廊下をしばらく進み、とある部屋に通された。 革張りのソファーが向かい合って2つとアンティークなローテブルが1つだけのシンプルな部屋だった。 「座れ」 グラド伯爵の言うとおりに少女はソファーに腰掛けた。 反対側にグラド伯爵が座り、グラド伯爵の後ろにメイド服の女性が立つ。 「なんの用でこの城に立ち入った」 「……え?えーっと……気が付いたら、石のいっぱいある広場にいて……どこに行っていいのかわからないのでとりあえずお城に……。でも、扉が開かなくて、女の人が開けてくれて……」 グラド伯爵が後ろを向こうとしたが「私ではありません」と、メイド服の女性に言われ視線を少女に戻した。 「広場というのは墓場の事か」 「おそらくそうでしょうね」 「は、墓場……ですか」 少女は思わずぎょっとした。 名前の刻まれた石は墓だったのだ。 「ということはゾンビの仲間か」 「でも、足元にあったのは知らない名前……」 「ほう、貴様の名前はなんというのだ?」 「え?名前は……」 そこで少女は言葉に詰まった。 (私の……名前……) 「ない……。思い出せない……というか……あるの?」 「おまえがゾンビでなければ名前はある」 「じゃぁ私ゾンビなの?」 「容姿は……違いますね」 「腐乱臭もないしな」 グラド伯爵はため息をついた。 「はぁ。しょうがない、ないのなら好きに名乗るがよい」 「え。はい。……うーん……」 少女は自分の意識の奥にふっと浮かんだ名前を自分の名前にした。 「ミナ」 「私の名前は……ミナ」
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