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序章~Opening of tragedy~
例えば、世界に終わりが来る時に、人はいったい、何を思うだろう。
例えば性格や遺伝、例えば今まで生きてきた環境、道程などで大きく変わるそれは、「人それぞれ」と、簡単に片付けられてしまう。
故に、人には思考する権利がある。
例えば誰かと笑い、例えば誰かと泣き、例えば悔しがって、例えば、喜んで……。
そういうのを繰り返して、人の心は下へ向かうトンネルのように、徐々に、徐々に、深く、深く、積み重なっていく。
地下にあるそれを、人は見ることが出来ない。その穴に誰かが間違えて落ちてしまわぬように、その上に建てた建前しか、人は見ることが出来ないのだ。
例えば世界の終わりの時まで笑おうと勤める者は、誰と笑い、どう笑うかを思考する。
例えば抗い戦おうとする者も居れば、祈るだけの者も居るように、人は常に、選択している。
その選択こそがいわゆる、運命。
運命は変わらないと言う者も居る。運命が変わったと喜ぶ者が居れば、そうなる運命だったのだと言う者も居る。
結局、何を選択し、どう思うか。それが運命なのだから、感情こそが、想いこそが、思考こそが全てなのではないだろうかと『 』は思う。
いや、そうあるべきなのではないかと、『 』は思う。
……と、こんな言い訳をしたところで、例えば天地がひっくり返ろうと、全ては手遅れなんだけど。
こんな深く掘り下げた穴、例えば世界中の人間を落とさなきゃ、埋められやしないさ。
だから、落としてやるよ。
世界中の人々を。『 』にこんな穴を心に掘らせたヤツらを、全員、全員。
――例えば、こんな手を使って。
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