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「うわっ、と、と」
格好良く受けとめられないのが、俺の情けないところ。
抱き締めようかどうしようか、と彼女の背中で手が宙をさまよったとき、彼女がしゃくり上げながら言った。
「あり、ありがとう。うぇっ、え~ん。ひっひっく。こち、こちらこそ、ひっくよろしくね。こんな私でもいいの?」
俺は思わず自然に抱き締めていた。胸の中でしゃくり上げている彼女が可愛く、そして愛しい。
「バッカだなぁ、いいも悪いもこっちからお願いしてんじゃん。ほらぁ、そんなに泣くなよ」
ポケットからハンカチを出そうとするが、指に触れるのはさっきのレストランのレシートだけだ。
「だってぇ、卑怯だよ。突然すぎるもん」
甘えた声で俺の胸におでこをすり寄せる彼女。
ますます可愛くなって、もっと強く抱き寄せようとした時だった!
パチパチパチパチパチ・・・
突然、周囲から拍手の嵐が巻き起こった!!
驚いて見回すと、周囲のカップルすべてがこちらを見ながら拍手をしている。
しまったぁ! そうか、メッセージを見るのは彼女だけじゃなかった!
そんな単純なことに気付かないなんて、俺は本当にアホだ。
しばらく何が起きたのか理解できずにポカーンとしていた俺たちは、突然すべてを理解し、弾かれたように離れた。
彼女の顔は可哀相なくらい真っ赤だ。きっと俺もだろう。
周囲のカップルのすべてがわけ知り顔であたたかい目線を投げ掛けているのがイヤだ!!
中にはウンウンと頷きながら涙をためてるヤツまでいる。
時々口笛が聞こえたり、「おめでと~!」とか、ちょっと勘違いした声まで聞こえてくる。
そのうち「チューしろー」何ていう冷やかしの声が。
しまいには「押し倒せ~」って、おぃ!!
居たたまれなくなった俺たちは、手を取り合うと猛ダッシュでその場から走り去った。
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