“彼”

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「君はなぜ産まれたの?」   彼は僕に尋ねる。   「……そんなことわからない」   生まれた瞬間、僕は答えた。   「わからないじゃダメだよ。しっかり考えて」   「……じゃあ時間をちょうだい。考える時間を」   「わかった」   それ以来僕の足元についてくる彼。 彼は僕と同じように成長する。 でも彼は“答を待っている”だけ。 静かに僕の真似をしながら。   僕は一生かけてこの質問の答を考える。 それまで彼は僕の足元から離れないだろう。   コイツに答を言うのは――自分に終わりが来た時だ。
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