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明るく華やかな午後のティータイムに、
向かい合いたくない顔が目の前にある。
「貴族の端くれのくせに、
気品のカケラもないわね。」
そう言うと、
男の目はますます笑みを湛える。
「心外だなぁ、
僕ほど気高い人間はいないじゃないですか。」
気高い?どこが。
裁縫道具でその口を縫い付けてあげましょうか?
「アンタの面を毎日拝む私の気持ちを察して欲しいわ。」
白いテーブルに溜め息を一つ零す。
「嫌気が差します?」
相変わらずニコニコしている。
終わらない鬼ごっこ。
今まで何度も逃亡を試みたが、
この男を撒けたことはない
「…いつか絶対自由になってやる。」
私は精一杯男を睨み付ける。
すると先程までの目がスッと細められ、
「それは無理ですよ。
貴女は鳥籠で飼われている身なのですから。」
一瞬にして威圧に変わる。
こうした顔をすると、
まるでキツネのようだ
「頑丈で豪華な城とゆう籠に幽閉された鳥。」
ね?
とまたもとの笑い顔に戻る。
「…それもそうね。」
冷めた紅茶を口に運びながら、
私は窓にはまった青い空を見上げた。
「けれど私が鳥ならば、
空を飛ぶために生まれてきたのよ。」
呟いた言葉は私の羽根になってゆく。
キツネは知らない。
日々鳥が翼を磨いていることを。
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