最終話・プレゼント

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  「芳男、有難う」 自分に心配をかけさせまいとしてくれるその気持ちが、嬉しかった。 あんなに真剣に恋していたくせに。 あんなに大切に想っていたくせに。 初めて本当の恋をしていたくせに。 そんなのすぐ忘れられる訳、無いのに。 「おい、2人して玄関先で何話し込んでんねや? とりあえず入れや」 ドアが開き、春人が顔だけ出しながら2人を促した。 直哉と芳男は部屋に上がった。そして宴会をした為、少し散らかっているリビングへ入る。 「おはよう。直哉」直哉の姿を見て、挨拶をくれた人物は充だった。 充も春人の部屋に居たのだ。直哉は一瞬驚いた。 「ああ。おはよう。充、珍しいな、泊まりなんて」 「まあね」充は肩をすくめて笑った。 直哉は何となくその理由が解った。 きっと、芳男の為に飲み会でもしたのだろう、と。 「あのさ、丁度良かった。コレからみんなの所にも行こうと思ってたんだ! ちょっと頼みたいことがあって、さ。聞いてくれるか――――」  
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