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まりなは、ウウン、と首を横に振った。「欲しいものは、何も無いよ」
だって、やっと手に入った。
何よりも欲しかった、彼の心。
そして、彼と歩んでいく幸せの時間。
大切な友達と、皆と、笑う時間。
「もう、十分だよ。オレは沢山、何時もみんなから幸せを貰ってるモン!」
まりなが笑ったが、ひとつ、思い出したように言った。「あ、でも、欲しいものがひとつだけ、ある」
「おぉ。何が欲しいんじゃ? 言ってごらん、まりなちゃん」
「自転車が欲しい」
「自転車?」珍しいものを欲しがられたので、夏彦は首を傾げた。
「ウン。昨日、オレのせいで直哉が大事な自転車を失くしちゃったんだ。だから、直哉が使える自転車が欲しい。オレは何も要らないから、直哉にプレゼントしてあげたい」
夏彦はそんなまりなの優しい心に、とても感動した。
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