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「三分経ったら、食べれる」
「わかったのだ!」
「じゃあ、それ食べたら、もう家に帰れ。悪戯も過ぎれば冗談じゃ済まなくなるぞ」
まりなに厳しい目を向ける直哉。既に冗談ですんでいるとは思えないが。
とにかくこのまま何も言わなかったら、何時までもまりなは用事も無いのにこの家にに居そうだ。なら、この辺りでビシッと言っておかねば!
「?」
キョトンとまりなが顔を上げて直哉を見た。
「俺も用事が無い奴に付き合うほど暇じゃないからな。今日は休みで家にいるけど、随分疲れているからゆっくり寝たいし。用事が無いなら帰ってもらいたいんだ」
「帰らなきゃ・・・・駄目なの?」
先程とは打って変わった沈んだ声になった。「どうしても?」
「どうしてもだ!」
しゅんとしたまりなが小声で呟いた。「・・・・だって、オレ、帰る家・・・・無いんだ」
「え、家が・・・・無い?」
直哉は面食らい、悪い事を言ってしまったと少し後悔を覚えた。
「ウン。無いんだ」
まりなは困ったように照れ笑いを浮かべた。
黙って俯く直哉を見たまりなは、にっこりと可愛い笑顔を見せた。「心配しなくても、オレなら大丈夫だよ!」
まりなの話もたいてい不幸(?)な話ではあるが、直哉もある意味不幸ではある。
こんな厄介な――しかも着払いの客をもてなしている時点で既に不幸だ。
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