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「あの、それよりオレ、直哉に話があるんだ」
まりなの表情が、この家に来て初めて真剣になった――ということは、これまでどんなにアホ面していたかということが容易に想像できる。
「一ヶ月前のこと、覚えてる?」
「一ヶ月前? それが何か?」
突然一ヶ月前のことと言われても・・・・。
多分彼は、雨の日だろうが風の日だろうが晴れてようが雪が降ろうが、はたまた雹が降ろうが、生活費を稼ぐ為に家庭教師か塾講師のバイトに明け暮れていただろう。
「そう。一ヶ月前」
「うーん。多分家庭教師のバイトしてたかな」
――やはり!
「ちがうのだ。バイトじゃなくて・・・・。とにかく、オレの話を聞いて欲しいのだ」
先程とは打って変わってのまりなの表情の変化に彼女の真剣さを見取り、直哉は素直に解った、と頷いた。
「確かあれは、小雨が降ってた。その中で――・・・・」
まりなは今言った『一ヶ月前』の出来事を、変わった言葉遣いでおぼつか無い説明ではあったが、一生懸命話し始めた。
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