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―― 一ヶ月前 ――
五月初旬。
梅雨の季節はもう少し先の季節の筈だが、ここ最近やけに小雨が多い日が続いていた。梅雨に近い季節からなのだろうか、それとも最近流行りの異常気象のせいだろうか。
とにかく今日も鬱陶しい小雨が続いていた。
大学を終え、家庭教師をしている生徒の家へと急ぐ直哉は、コンビニエンスストアで何処にでも売っているような、紺色の大きな傘をさしながら自転車で走っていた。
今日行く生徒の家は、大きな公園の中を突っ切って行った方が早く到着できるので、公園の中を走っていた時だった。
小さな丘の上にある大きな木の傍を通った辺りで、とても小さく、本当に消え入るかのような鳴き声に気づいた直哉は、家庭教師の約束の時間も気になったが、それよりもその声が気になってしまい、自転車を降りて声がした方に駆けていった。
「にゅう・・・・みゅ~」
声の元へたどり着くと、捨て猫だろうと思われる猫が汚いダンボールと共に、ポツンと置き去りにされていた。
さっきの消え入りそうな小さな声の主は、生まれたばかりの目すら開いてもいない、小さな小さな子猫だった。
薄汚れた小さなダンボールに押し込まれ、小雨に打たれ、開いた箱に手を掛けることもできず、小さな身体を震わせて心細気に鳴いていた。
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