10446人が本棚に入れています
本棚に追加
「・・・・お前、捨てられたのか?」
そっとダンボールを覗き込み、小さな頭を撫でてやる直哉。
「みゃう」
甘えた声で直哉に擦り寄ろうとする子猫。だが生まれたばかりで目が見えていない。感覚のみでフラフラと彼の手に擦り寄り、甘えた声を出す。
「困ったな。俺、今からバイトで・・・・」
猫にそんなことを言っても分からないのは十分承知だが、ついつい言ってしまう直哉だった。
しかしこうしていても時間ばかり過ぎるなと考えた直哉は、持っていた傘をダンボールの方に立てかける。
「これやるよ。また後で来るから、いい子で待ってるんだぞ」
優しく頭を撫でてやり、急いで生徒の家へと向かう直哉。
「今の・・・・」
木陰から様子を見ていた金髪の女の子が、子猫の傍にやってきて小さく呟いた。
「あの人が、最初の――」
金髪の少女はすぐ顔を上げ、雨の降る公園に置き去りにされている子猫の元を離れていった。
最初のコメントを投稿しよう!