第1話・着払いのプレゼント

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  「・・・・お前、捨てられたのか?」  そっとダンボールを覗き込み、小さな頭を撫でてやる直哉。 「みゃう」  甘えた声で直哉に擦り寄ろうとする子猫。だが生まれたばかりで目が見えていない。感覚のみでフラフラと彼の手に擦り寄り、甘えた声を出す。 「困ったな。俺、今からバイトで・・・・」  猫にそんなことを言っても分からないのは十分承知だが、ついつい言ってしまう直哉だった。  しかしこうしていても時間ばかり過ぎるなと考えた直哉は、持っていた傘をダンボールの方に立てかける。 「これやるよ。また後で来るから、いい子で待ってるんだぞ」  優しく頭を撫でてやり、急いで生徒の家へと向かう直哉。 「今の・・・・」  木陰から様子を見ていた金髪の女の子が、子猫の傍にやってきて小さく呟いた。 「あの人が、最初の――」  金髪の少女はすぐ顔を上げ、雨の降る公園に置き去りにされている子猫の元を離れていった。
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