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気まずい沈黙、町並みの華やかさとは裏腹に黙々と家路を歩く。
「…あ~、なんていうかアレだ。こっちの方って雪は頻繁に降るのか?俺はこの街に来てまだ一年経たないからな」
とりあえずいきなり話題を変えるのも不自然だから聞いてみた。
「え?あ、うん。まぁ、降るよ。積もる程じゃないけど…」
口下手な自分が喋らないと重い雰囲気だ、仕方ない。
「なら良かった。俺があんまり目立たないで済む」
そう言って自分の髪を掻く。銀髪の長髪だ、ゴム一本で結っている。日本人の若者にしては非常識な代物。生粋の日本人だったがとあるショックでこんなになってしまったのだ。
彼女は笑った。
「あら、そんなことを気にする心があったのね、あなた」
「これでも思春期だからな、若さの特権だろ?」
「あなたが言うと説得力ゼロよ、精神的にはおじいさんなんだから」
「そいつはひでぇ、俺が歳喰ってるのは髪だけだ。子供は風の子だろ、冬は元気に走り回りたい気分にもなるんだぜ?」
「はいはい、本当にはしゃいで風邪引く子供にならないでよ」
「そっちの風邪じゃない」
いつもの彼女にちょっとずつ戻ったようだ。
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