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俺と彼女との出会いはちょうど一年前、こんな曇天の空の下だった。ただ深々と雪が降る冷たい午後。人気のない橋の下、俺は踞っていた。腹には穴が1つ。銃創とかいうやつだ。その風穴から遠慮なしに温かさが抜けていく。白い雪が紅く染まるのは客観的には綺麗かも知れないが直視できたものじゃない。
「ぐッ」
寒いのに一ヵ所だけ熱い。死を間近に覚え心が折れる。覚悟は出来てると思ったのに、直前でこれだ、情けない。
幸いなのは好きな雪が降っていることだけ。泣き出しそうなのを堪え、空を仰いだ。せめて最後は吸い込まれそうな空を見ながら、と顔を上げると見えたのは冬空ではなかった。
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