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女の子だった。肩までかかる真っ直ぐな髪と目、白いマフラーとコートと傘をしていた。お互い意外な者をみた表情で視線が交わること数秒後、
「何してるんですか?」
またまた真っ直ぐな声だった。こんな偶然に苦笑して考える。普通、こんな男を見つけたら怯えるだろう、と呆れながら答える。
「見ての通りさ、俺に関わらない方がいい。ここで見たことは忘れて去ってくれ」
「確かにこんな状況に遭遇したら関わらないのがいいんだろうけど…」
彼女は言い淀む。
「なら何処かへ行ってくれ」
俺は促す。
「あなたは死にたいようには見えないんだけど?」
ハッと息を呑む。死ぬ覚悟ができていないのが見抜かれている。初対面の人間にだ。
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