デート

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コンコン 詩織が誠の部屋の扉をノックし、返事を待たずに中に入る。 「おはようございます。誠さん、起きてくださーい!今日は出かけるんでしょう?」 「……おはよ~」 誠は体を起こすと詩織に挨拶した。 いつもなら誠を起こすのは由希の役目なのだが、今日は違う。 本日のデートを行うにあたり、由希から三つの条件を出されていた。 『…一つ。…なるべく家では顔を合わせない』 新鮮さを演出するためだそうだ。 『…二つ。…家から一緒に出かけるのではなく、待ち合わせをする』 その方がデートっぽくなるかららしい。 『…三つ。………デート中は必ず手をつなぐ』 これがデートと買い物の決定的な違いらしい。 最初は恥ずかしいと断ったのだが、また泣かれそうになり、誠は慌てて了承した。 「ほら、しゃんとして下さい。朝食に天ぷらとすき焼きを用意してありますから、冷めないうちに早く食べちゃって下さい」 なぜ朝からそんな重たいものを…。 誠はげんなりしながらリビングへ向かった。
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