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「行ってきます」
玄関に飾られている写真に挨拶するのが朝の日課。
写真の中で笑っている両親は今はもう居ない。
四年ほど前に、仕事で訪れていたアメリカで反政府組織が起こしたテロに運悪く巻き込まれ他界してしまった。
まだ誠が小学校六年生の頃だ。
当時の誠にはテロが何を意味するのかは分からなかった。
分かったことは両親が二度と帰らないということ。
つい先程まであった、いつまでも続くと思っていた日常が、次の瞬間には音すら立てずに簡単に崩れ去り、どんなに願っても取り戻すことなど出来ないということだった。
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