第一章

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  「はい、白河探偵事務所です」 『白河さん、緑川です』 …緑川優子? どうしたんだろう…。 『今、真奈美の携帯に…話が……るんで…ど…』 ノイズ…? 嫌な予感がした。 かつて、心霊現象に遭遇したときも携帯が不通になったことがある。 そのときの記憶が甦る。 「…コーヘイ?」 「もしもし! 緑川さん?」 「コーヘイ!」 先輩の声に俺が振り向く。 モニターを指差し、呆れた表情の先輩。 「…笑ってんだけど?」 「何がです?」 「白い顔よ」 …そんなはずはない。 俺達が見た時は、確かに無表情だったはず。 俺は確認をするために、電話を抱えたまま、パソコンのモニターを覗き込んだ。 …笑ってる。 笑うというより、にやけてると言った方が正確だろう。 真っ白い能面みたいな顔は口を吊り上げて、笑っていた。 強烈な嫌な予感。 電話口からはノイズ混じりの緑川優子の声が聞こえていた。 「緑川さん! 赤坂さんを連れてすぐに戻ってくるんだ! 一人になってはいけない!」 俺は受話器に向かって叫んでいた。 事態が飲み込めない先輩が俺を睨む。 「ちょっと! 勝手なマネしないでよ!」 「危険なことに手を打つのに早すぎるということはない、と言いましたよね? それです」
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