~序章~ 西風と南風

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  ジュリアーノと呼ばれたその若い男は、ほんの一瞬チラとそちらに向かって微笑む。 そして、華麗な剣さばきで、敵の一人の不意をついて切り付けた。   しかし。   「ロレンツォ様、弟君のジュリアーノ様のことも気になられるでしょうが、このままではあなたの命も危険です!」   ロレンツォの友人は早口でそう言うと、ついに重い青銅の扉を閉める。   (ジュリアーノ……)   出血のために朦朧とした意識の中で、ロレンツォは弟ジュリアーノや、ガイア・ブリガータ(陽気な仲間)と過ごした、愛しき時代の終焉を予感していた――。  
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