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「…おぅ!」
落ち着け俺。
今,亮が声を掛けてくれなかったら冷静さを失ってた。
さっき投げたのはド真ん中のストレート。
次は少しコースを外して同じ球でいこう。
…うん,やはり亮からも同じサインが出た。
俺たちの呼吸も合ってる,完璧だ。
再び思いっきり振りかぶって放った。
バシンッーーーーーーーーー
またもやバッターはピクリとも動かず,俺の球は亮のグローブに埋まる。
打てないにしても,何で全く動かない?
ナメてんのか俺たちを?
「…2球も球の見極めに見送ったけど,君の球……それしか球種ないでしょ?
変化球を投げれない人の典型的ストレートだ。
なるほどね,選ばれないはずだよ君。」
アイツのその発言を受けて,あの先輩たちがクスクスと笑っている。
俺の中で我慢していた何かがはじけた。
「………どいつもこいつもバカにしやがってッ!!」
俺の雄叫びと共に手から放たれる第3球目。
球は今までで1番走っていて,亮が構える内角低めに直進した。
カッキーーンッーーーーーー
「………え?」
それはさっきまでとは違う音。
亮のグローブにボールはない。
振り返った俺の目に,ホームランゾーンを軽々と越えていく打球が映った。
「…………ホームラン…。」
人生で初めて打たれたホームランは,最悪の形でとなった。
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