†第2球† 残酷な現実

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初めて自分の球を打たれたショックで俺は思考が停止した。 亮も同じような顔をしている。 俺たちが初めて味わった完全なる敗北。 心が折れそうだった。 「確かに君の球は速いよ。そこは評価に値すると思う。 でもね? 変化のない,ただ速いだけの棒球じゃ白桜のピッチャーは務まらない。 うん,よくそれで白桜に受かったね。 コネか何かでもあったのかい?」 打った本人から直接言われる球の評価やイヤミが何よりも辛かった。 「おい,どしたぁー? まだ5人も残ってるのに心が折れちまったかぁー? アハハハッ!」 またあの先輩たちが自分をバカにしている。 確かにそうだ。 まだ5人もいるのに落ち込んでなんかいられない。 うん,残りの5人をキッチリ決めてやれば良いじゃねぇか。 「ごめんごめん,残り5人しっかり取るぞ亮?」 「……お,おぅッ! (……あんな完璧の球をホームランなんて…。 内角低めをあんな所までもってくなんて,何て力なんだよアイツッ!) よしッ! ドンマイドンマイ! 気を引き締めてこッ!」 再びグローブを俺へと真っ直ぐ構える亮。 「……ッしゃぁ! (さっきのは相手が悪かっただけ! きっとアイツが入部した1年でナンバーワンなんだッ! だから………ッ!) 行ッけーーッ!!」 バッターボックスで構える2人目のバッターに力いっぱい豪速球を放つ。 俺によって放たれた球は勢いに乗っていて,風を切ってるかのように真っ直ぐ進んだ。
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