†第2球† 残酷な現実

7/7
前へ
/161ページ
次へ
俺たちはグラウンドで膝をついてうなだれていた。 あれから5球で勝負がついた。 風を切るように進んでいった俺の豪速球を,ホームランゾーンいくかいかないかギリギリのスリーベース級ヒットを打たれたのは5分前の事。 その2人目の3ベースを始めとして,2ベース……2ベース……ホームラン……… そして,今まさにラストの6人目に打たれたホームラン………。 全員に初球から打たれたから,あれから俺が投げた球はたったの5球。 俺たちは三振どころかアウト1つ取れる事なく終わった。 「………………。」 「………………。」 全く口を開く事が出来なくなったうなだれた俺たちに,あのウザい先輩たちを先頭に部員たちが寄ってきた。 「これで分かったか? お前らは所詮,井の中の蛙に過ぎねぇってこと。 それを良い気になりやがって,調子に乗りやがってよぉ……野球ナメんなよッ!? ここはお前らが過ごしてきた,おちゃらけた野球人生とは世界が違うんだよッ!!」 悔しいのに…心の底から悔しいのに何も返す言葉がなかった。 ホントに何を浮かれて調子に乗っていたんだろう俺たちは……。 ………ホントバカだ。 「もしお前らがホントに野球が好きで,まだ野球がやりたいって思うならこの部には入らねぇ方が良い。 お前らみたいに使えねぇ奴は白桜野球部に必要ない。 ………中途半端な才能でこんなとこに入っても,可能性を潰されるだけだ。 転校して他の野球部に入るなり,この学校で『野球愛好会』を作るなりするんだな。 おい,誰か動けなくなってるコイツらを練習場からつまみ出せ。 あと,先輩たちが帰ってくる前に早くグラウンドならしとけよ。」 「はいッ!」 悔しくて悔しくて涙が止まらなかった。
/161ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加