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滅多滅多にされてからの学校からの帰り道,俺たちはお互いに一切口を開かずに無言で歩いていた。
「………なぁ,亮?」
痺れを切らして先に口を開いたのは俺。
「…ん?」
「これから……どうする?」
俺の問いかけに再び無言の時が流れた。
「…………京介?
俺さ,もう野球辞めるわ。」
「……………は?」
信じられない言葉が亮の口から紡がれた。
「何……言ってんだよお前?
冗談……だよな?」
嘘と言ってほしい。
それ故の聞き返し。
「………冗談でこんな事言う訳ないだろ?」
「何でだよッ!?
少しボロボロにされたくらいで逃げんのかよッ!!
このままで悔しくないのかッ!?」
「悔しくない訳ねぇだろッ!!
悔しいよ………スッゴく悔しい。
今まで無敵だと思ってたお前の球があんなに意図も簡単に打たれて……俺がどんなにコースをついたところに構えても打たれて……悔しくないわけねぇだろッ……。」
その声は震えていて,今にも泣き出しそうだった。
「だったらさぁッ!
悔しいならこのまま逃げんなよォ……。」
俺の声もすごく震えていて,また泣き出してしまいそうで嫌だった。
「………もう無理なんだ。
さっき気付いた。
このまま野球を続けていたら……大好きな野球を嫌いになってしまいそうで怖いんだ。
俺たちはさぁ,あの先輩たちの言うように野球をナメてたよ…。
今までが自分たちの思う通りになっててさ。
高校野球って……俺たちが思ってた以上にレベル高いよ。
まして白桜野球部なんて俺らがいれる場所じゃねぇよ。
お前だって,その肌で感じたんだろ?
何て罵られたって良い。逃げ出した臆病者だと思われても良い。
俺は……野球好きでいたいんだ。」
俺は震える拳を振りかぶって亮の頬を思いっきりぶん殴った。
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