第一章~始まりの詩~

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アスクが二階へと上がると、クードが先ほどまで座っていた場所で待っていた。アスクもそのテーブルに座り、ちょうどクードと向かい合う形になった。と、後ろから酔っ払いが声をかけてきた。 「いや~まさか、あんたがあの有名な旋風だとはな~」 「おっさん、あんまり酒臭い息を彼女に吹き掛けるなよ、さっきの豚みたいにやられても知らないぜ」  クードのその言葉に酔っ払いは首を竦めた。 「違いねえ、それより。旋風もすげえが、こっからあそこまで跳んでったお前も何モンだよって感じだな」  酔っ払いの言う通り、二階から一階までの高さはそれほどでもないが、アスクが居た場所からは30メートルは離れていた。それだけでもクードがただ者ではない事が伺えた。 「俺はたいした事はないよ」 「依頼の話を頼む」  中々話が始まらないので、アスクがクードに少しだけ強めに言う。 「そうだったね」 クードは目を閉じたまま深く息を吸い、話し始めた。 「単刀直入に言って、依頼人は俺じゃない」  クードのその言葉にアスクは少し考え、ポツリと呟く。 「……仲介者か」 「ご名答♪」 仲介者 ギルドに依頼をするに辺りどうしても避けられない事。 それは依頼人の情報が残るという事、ギルドとしては不透明な仕事を登録する訳にはいかない、その為に依頼人、依頼主にはかなり細かい情報の提示が求められる。例外はあるが……。  やはりできるだけ表沙汰にしたくない、自分達の情報を残したくないという依頼主もいる。その為に存在するのが仲介者。仲介者は依頼人の代わりにギルドに仕事を登録する、そしてその際に何か問題があれば、仲介者が全ての責任を負う。  つまりは実際の依頼主にまで問題が届かないのだ。実際、仲介人を通す仕事は危険な仕事や面倒な仕事が多く、仲介人はかなりの報酬を得られるがそれ以上のリスクも伴う仕事と言えよう。最近では仲介者ギルドもできたらしい。 少しの沈黙の後にクードが口を開く。 「とりあえず俺が知ってる情報を話そう」 アスクは頷いてクードの次の言葉を待った。
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