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「まず君には本当の依頼人に会ってもらう」
クードはそこでいつの間にか頼んでいたコーヒーを一口飲んだ。
「王都デュナミス、君にはそこに向かってもらう」
「おいおい、王都まではかなりの距離があるぜ、王都にもギルドはあるのに、なんでそこにしないでここなんだ?」
酔っ払いが口を挟む。クードはそれを目線で制すると語り始める
「それには理由がある」
「私を試す為……だろ?」
急に口を開いたアスクをクードが驚いたように見つめ、口元に運んだカップを戻す。
「さっすが、頭も切れるみたいだね、なら話は早い」
するとクードは懐から何枚かの紙を取り出し、アスクの前に置いた。
「これは……、依頼書の写しか」
「そう、そこに書いてある討伐対象の魔物全てを討伐しつつ王都に向かってもらう」
酔っ払いがその依頼書を覗き込み驚愕した。
「こりゃあ……、全部何十人……、いや、こいつなんか何百人規模の軍隊が必要な魔物じゃねえか!?」
「問題無い」
酔っ払いの言葉にアスクはきっぱりと言った。
「一応俺も付いて行くけど、あんまり戦わないから」
クードは何が面白いのか、ニヤニヤと笑いながら言う。
「出発は?」
「明日だ、今日泊まる宿はこちらで用意してある、案内しよう」
アスクとクードは立ち上がり、その場を去ろうとした、その時。
「……すまん」
先ほどの獣人が声をかけてきた。
「……私を雇わないか?」
「いいだろう」
アスクは即答する。
「ヌダだ」
獣人はそう短く名乗った。
「おっ、よろしくな、兄ちゃん」
クードの言葉にヌダが腕組みをしながら。
「……私は、女だ……」
と呟いた。
クードは苦笑しながら先に歩き始めた。
「あいつら……、おもしれえな」
残された酔っ払いはそう言ってクックと笑うと。手にした酒を飲み干し。酒場を出るアスク達を見送った。
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