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街の外れ。
クードは暗闇の中でひざまづいていた。
「……はい……かなり頭も切れる様です」
何者かと話をしているが。相手の姿は闇に呑まれていて見えない。
「……彼女であれば……我々の計画を……導き…」
特殊な話術を使っているのか、クードのその声はひどく聞き取りにくい。
「はっ……御意のままに……“鍵”は必ずやあなた様に……」
闇がクードに何かを囁く。すると下を向いているクードの眼光が鋭くなった。
「万が一の時は……」
「私が始末します」
闇の気配が消え、その場にはクードのみが残された。クードはゆっくりと立ち上がり、笑った。その笑顔は酷く歪んでいて、狂気に満ちていた。
「もうすぐだ……俺は……いや僕は……悪魔に魂を売ってでもだ」
空を仰ぎ、暗く狂気に満ちた笑いが辺りに響く。それが収まるとクードはまた偽りの自分を身に纏う。そう、クードと言う人物を再び演じるのだ。
空に浮かぶ月は、ほのかに紅い色をしていた。
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