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ギルド内では喧嘩が絶えない。少しでも減らそうとギルド側も様々な対策を講じているのだが……。
例えば、ギルド内への訓練場、鍛練場設置などがそうだ。身体を動かす場を作れば喧嘩も減るであろうという考えがあったようだが。
効果は0では無い、喧嘩は無くならない。
何故なら。
皆(みな)が望むからだ。
今も喧嘩になりそうだと分かると、周りの者達は机や椅子を片付け、まるで祭か何かを見ている様に騒いでいる。沢山の野次馬達が、楽しみながら事の成り行きを見守っていた。
「女! この俺様が誰だか分かって喧嘩を売ってんのか?」
「知らん」
男が真っ赤な顔で凄むが、間髪入れずに女が切り返す。
「豚の知り合いはいない筈だが?」
ドッと周りの野次馬達が沸き。もはや男の顔は赤を通り越して紫に近い。
その様子を二階のテーブルから見ている若い男がいた。
「おっ、ありゃまずいね~」
若い男のその言葉に酔っ払いの一人が反応する。
「ああ……あの女、とんでもないやつらに喧嘩を売っちまった。あいつらは盗賊紛いの事も平気でやる“ゴンザレス一味”ってんだ」
酔っ払いは手にした酒を一気に飲み干し。
「あの女……。下手したら死ぬぞ……」
酔っ払いの真面目な言葉に、若い男は一瞬目を丸くした後腹を抱えて大声で笑いだした。
「……確かに、あれは危ない……」
と、笑いすぎて涙目の若い男の後ろから声がする。先ほど女が入口で見た豹の姿をした獣人だ。
「お? あんたも解るのか?」
若い男が獣人に話かける。獣人は腕を組み、若い男に向けて頷いた。
酔っ払いが首を傾げた。
「あの女が危ないのは誰が見てもわかるだろ?」
酔っ払いの言葉に、また若い男が笑いだす。
「違う」
獣人が小さく呟くと、若い男は急に笑うのを止め、ゴンザレスと呼ばれた男に目を向けながら酔っ払いに言った。
「逆だよ、俺やそこにいるケモノの兄ちゃんが心配してるのは」
若い男は視線を女へと移す。
「あの女が、相手の男達をみ~んな殺しちまいそうだからさ」
若い男が舌を出し、首をチョンチョンと切るマネをしながら言った。
瞬間。
野次馬達から歓声があがる。
「ほら、始まったぜ」
若い男は楽しそうに言った。
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