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「その見た目と強さ、あんたが旋風?」
若い男は女に話かける。
女は若い男を見た。自分よりも歳は少し下。おそらくは二十歳を過ぎた位であろう。髪の色は黒髪で前髪が長く、左目が隠れていた。どこと無く、気品を感じさせる顔立ちだ。腰には細身の剣を左右に一本ずつ差している。
「お前がクードか?」
「そういう事♪」
女の問いにクードは微笑みながら答える。
「すまないな騒がしくて」
「いや、俺としては君の実力が見れて良かったよ」
「俺様を無視するな!」
ゴンザレスが苛々としながら叫んだ。
「ああ、すまない豚」
「一応あの豚にもゴンザレスって名前があるみたいだな」
女とクードは、それでもマイペースに話す。
と。
突如地響きがする。
二人はゴンザレスの方を向くと、ゴンザレスはその手に巨大な戦斧を握っていた。どうやら地響きはその戦斧を地面に下ろした衝撃だったようだ。
「後悔するんじゃねえぞ! この俺様がこいつを持った以上、タダじゃ済まねえからなあ!」
ゴンザレスは巨大な戦斧を構え。
「この俺様と同じ名を冠する戦斧
“ゴンザレス”がな!!!」
女はその様子を苦笑しながら見つめた。
「すぐ終わらせる……ああそれと」
女は思い出したように受付の娘の方へと振り向いた。
「私の名は」
「ヌオぉぉぉ!! 死ねいぃぃ!!」
ゴンザレスが斧を振り上げ、女へと突進してくる。
女が背中の包みを解く。中からは穂先が黒く、柄が白銀に輝く槍が姿を現した。女に向かって振り下ろされる斧、女は微笑みながら娘を見つめたままで槍を握ってはいるものの。ゴンザレスには未だ背を向けた状態。
娘の目にはその光景が。
まるでスローモーションのように見えた。
真っ直ぐと女の頭に吸い込まれる斧。
娘が危ないと思い目を閉じたその時。
一陣の風が吹いた。
娘が目を開いた時。
そこには巨体を横たえたゴンザレスと。
槍を肩に担ぎ。先ほどと変わらない微笑みを浮かべ、娘を見つめている女がいた。
「私の名は」
“アスク“
女はそう言って、槍を背の包みへと戻した。
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