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男の声が途絶えると、私は先程の白い雪景色の中に立っていた。少年が嬉しそうに横からスケッチブックを覗き込む。私はポケットから赤のクレヨンを取り出し、おもむろに絵を描いた。女の絵だった。
誰の似顔絵かと少年に尋ねられ、私は、「君のお母さんの絵だよ」と答えた。スケッチブックを返すと彼は両手でそれを抱き抱え、目を細めた。
「ありがとう」と言うと彼は軽い足どりで雪道へと消えた。機関銃をしょった背中は小さかった。
―完―
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