Closed

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朱い夕暮れに 雪が混ざり合い 赤が点々と 降下している   水商売を営む 私の朝は夕方である   それを見た私の 第一声は、こう   「あ゛ー」   くしゃくしゃと 頭を掻きながら 悪態をつく   寒いのは嫌いだが 幸い今日は日曜 プラマイゼロ、といった所か   さっと風呂に入り 湯冷めしない内に 服を着込む。   戸締まりをし 駐車場に行き バイクに跨がる。 クラッチが 変な気がしないでもないが 気にはしない   法定速度は一応、守る   10分弱で職場に着く 都会なこの街は 駐車金が高くて困る   日曜のこの街は 閑散としていて、いい。 キャッチの兄ちゃんも居ない   静かな大通りの ちょうど中央にある店で 私は働いている   地下に位置し薄暗い 隠れ家的な要素を含む 遊び心のある店だ   ほかのスタッフ達は 料理の仕込みに追われている それを横目に 店内に流れるマスター好みの カントリーの音楽を 口ずさみながら   入口の掃除と オープン作業に勤しむ   看板を立て 明かりを燈し 最後の仕上げに Closedの看板をひっくり返し OPENにする。   「よしっ」の声と共に 気合いが入る   今日一日の始まりだ   おっと 早速誰かがやって来たようだ 小気味よく 靴音が聞こえる―――   身なりの良さそうな いわゆるオジサマに こう問う   いらっしゃいませ 何名様でしょうか―――
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