『悲劇』は人の隙を見てやってくる

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私は産まれて6ヵ月で頭から熱湯をかぶり、重度の火傷を、額、唇、首、そして胸から右肩までの範囲で負ってしまった。 この章での話は私が過去に両親から聞いた事を参考にして書きます。 生後6ヵ月……子持ちの方々なら良くご存知だと思いますが、丁度その年頃の仕草や動作はハィハィが出来て元気に動きまわる事と、起立が出来るか、出来ないか、ぐらいの頃合い。 ある日の夕方、私はオモチャで一人遊んでいたようだ。母親は夕食の準備、父は仕事。 私は母親にかまってほしかったのだろうか、夕飯の支度をする母のもとへ背後からスタスタと近付いていく。 母は私が接近していると言う事に全く気付いていなかったのだろう。 台所までたどり着いた私はその場で立ち上がろうとし、頭の上には棒状の物があり、それに向けて手を伸ばす…… それがまさか、片手鍋の取っ手で、中にはグツグツと沸騰している熱湯。だとは生後6ヵ月の私には分からなかった。 ……『バシャーーン‼』 この世の者とは思えないような大声で泣き叫ぶ。私の体とその周囲には湯気で真っ白。その中から泣き声が響き渡る。 母は即座に水をかけ続けた。 幸いその時住んでいたのがアパートで私の奇声と母の呼び掛けを聞きつけ、隣人が救急車を呼んでくれたようだ。
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