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二人は食事を済ませ、海の見える場所に車をとめ、話もせず海に吸い込まれて行く雪を見ていた
沈黙を破ったのは優だった
(私が死んでも、毎年雪になって一馬さんに会いにくるね)
「優…」
(春になれば、桜の花びらになって会いに来るね)
(夏は、ん~…蝉はいやだからどうしよう)
(秋は、黄金色の落ち葉になって一馬さんにまとわりつこうかな)
(私は、いつでも傍にいて一馬さんを見守っているから、寂しくないよ)
一馬は黙って聞いていた
窓の外を見るふりをしながら、零れ落ちる涙をぬぐう
(私、短い間だったけど、一生分の恋愛が出来たからとても幸せだよ)
「俺も…幸せだよ」
(ごめんね…)
「ん?」
(先に消えてしまうから)
「すぐ、後から追い付くよ」
(一馬さん…絶対に自分から会いに来ないでね)
「わかってるよ」
一馬は優を抱き寄せながら、指にかわいい指輪をはめた
「Merry X'mas優」
(ありがとう、すごく可愛い)
優は嬉しそうに指輪を眺めていた
(私はね…これ)
そう言いながら、綺麗なブルーのマフラーを首にかけた
「ありがとう、大切にするよ」
(下手くそでごめんね)
「そんな事ないよ、優の愛情がたくさん詰まってるからあたたかい」
(なんか恥ずかしいな)
沈む夕日を眺めながら、優は泣いていた
「優…」
(あれ?おかしいな…泣かないって決めてたのに)
「我慢しなくていいから」
その言葉を聞いた優は、今まで我慢していた涙を零した
(もっと…一緒にいたいよ…)
一馬はその悲しい言葉に
返事が出来なかった
ただ、黙って抱きしめる事しか…
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