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どれくらい経ったのだろう
雪はやみ、空には星達が煌めいていた
「雪がやんだね」
(うん…やんじゃったね)
優が弱々しく答えた
車の中から見る景色は、白く化粧を施した木々と、白い砂浜だった
(一馬さん…)
「ん?」
(お願いがあるんだけど…)
「何かな?」
(砂浜に行きたいな)
「砂浜?」
(うん)
「ん~…寒いよ?」
(大丈夫)
「わかったよ」
一馬は優を抱き上げ、上から自分のコートをかけ、砂浜に向かう
りお以外の女性をまた、抱き上げる事が出来るなんて、信じられないと思っていた
腕の中の優は、とても軽く、今にも消えてしまいそうな錯覚に陥る
そんな錯覚を頭の中で振り払い、優を見つめて笑う
「寒くない?」
(だい…じょうぶ)
「うん」
月は好きだった
雪も好きだった
でも、今は消えてほしいと願う
明るい月に反射する雪が、二人を映し出す
一馬は涙を必死に我慢していた
もし、暗闇なら
きっと声を出さずに泣いていただろう
しかし、今は泣いてはいけないと自分に言い聞かせる
水面にゆらゆらと月が
映し出されていた
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