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一馬は砂浜に流れ着いた手頃な流木の上に腰掛けた
(雪も綺麗だけど、星も綺麗だね)
「そうだね」
優は無理して話をした
(私は、病気になってよかったと思ってるんだ)
「何で?」
(だって、私が病院にいたから一馬さんと知り合えたでしょ?)
「そうだね」
(もしも入院していなかったら、こうして二人でいることもなかったと思う)
「うん」
(恋愛も諦めてたのに、今はとても…幸せ)
「俺も幸せだよ」
(人を好きになる事はとても素敵な事だと初めて思えたんだ)
「うん」
(だからね…だから)
「余り喋らない方がいい」
(ううん…これだけは言いたいから)
優は小さな声をふりしぼりながら話を続けた
(だから、私がいなくなっても一馬さんはまた素敵な恋愛をしてね)
「無理だよ…」
(私は十分幸せにしてもらったから)
「まだまだ幸せにしたいよ」
(一馬さん…ありがとう)
「優?」
その時、一馬の手に一粒の涙が落ちてきた
「優?返事…してよ」
一馬は優の頬を手ではさみ、顔を覗き込んだ
やわらかな微笑みを浮かべながら眠るように目を閉じていた
「やだよ…まだ幸せにしてあげてないよ…さっきまで話をしてたのに…」
優の顔を見ながらおさえていた涙が一気に溢れ出す
「優…寝てるんだよね?」
優が突然消えてしまった現実を受け入れられないでいた
「優…やだよ…耐えられない」
一馬は突然の死を受け入れる程、強くはなかった
「優…約束を…破っていい?」
「いいよね?だから…俺も優といくよ」
一馬はそう言うと、優にキスをして微笑んだ
「優、この月の道を進んで行けば…また会えるよね?」
一馬は優を抱き抱えながら、静かに海に入っていった
「約束守れなくてごめんね…」
一馬は何度も優に語りかけながらゆっくり歩いていた
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