3179人が本棚に入れています
本棚に追加
穏やかな音楽が流れている、
晴れ空の草原を模したフィールド。そこに一人のPC(プレイヤーキャラクター)が倒れていた。剣士風の格好をした少年キャラ。
…ていうか、俺。
宝箱の周りをぐるぐる徘徊するモンスターの一群を見つけ、早速バトルを仕掛けたところ、
ゴブリン系モンスターに一発KOされた…。
しかも、ダメージ9999…
あ、ありえねぇ…
あまりの出来事に呆然とする俺の周りをモンスターが何事もなかったようにまた徘徊を始めている。
…何このゲーム…
出鼻をくじかれ、すっかりやる気を無くした俺は、なんかもうどうしたもんかとしばらく考えこんでいた。
と、そこへ。
「おっ!獲物一号発見!行くぞ鉄夫!!」
「ほいほいさ~♪」
意気揚々とした声が聞こえたと思った直後、穏やかだったBGMが突如激しいバトルBGMへと切り替わった!
どんっ!
俺の目の前で凄い速さで緑色のPCがすっ飛んで行った。
そして緑色のPCは必殺技的な何かを叫びながら
大鎌をふるい、複数のモンスターを一気に薙ぎ倒す!
「す、すげー…!」
俺は思わず声を上げていた。
緑色のPCは、若葉色の地肌に白いタテガミとふさふさの尻尾を生やし、獅子にも狼にも見える顔つきの筋骨たくましい獣人キャラだった。
その獣人キャラが大鎌をふるう度にモンスターがのけぞり、吹き飛び、ついには力尽きて消滅する。
あっという間にモンスターは全滅し、フィールドに再び穏やかな音楽が流れ始めた。
「お疲れ~シューリン♪さすがだね~僕の出番無かったよ~」
少し離れて様子を見ていたPCが獣人に駆け寄ってゆく。
こちらは人間型で、藍色の帽子と服の何だか地味な男キャラ。手に杖を持っている。
「鉄夫、やっぱりこのエリアじゃ敵弱すぎだ。全然経験値たまらないし、つまらないぞ」
「あはは~そうだね~。でもまぁ、今回はレベル上げぢゃなくて、アイテム探しに来たんだから、我慢、我慢。敵弱い方が僕も楽できるしぃ♪」
「…ぬぅぅ、仕方ないかぁ…」
獣人は不満げな声をもらしつつ歩み出した。
そして、倒れている俺の頭を踏みつけた。
最初のコメントを投稿しよう!