仮想の楽園

3/4
前へ
/623ページ
次へ
穏やかな音楽が流れている、 晴れ空の草原を模したフィールド。そこに一人のPC(プレイヤーキャラクター)が倒れていた。剣士風の格好をした少年キャラ。 …ていうか、俺。 宝箱の周りをぐるぐる徘徊するモンスターの一群を見つけ、早速バトルを仕掛けたところ、 ゴブリン系モンスターに一発KOされた…。 しかも、ダメージ9999… あ、ありえねぇ… あまりの出来事に呆然とする俺の周りをモンスターが何事もなかったようにまた徘徊を始めている。 …何このゲーム… 出鼻をくじかれ、すっかりやる気を無くした俺は、なんかもうどうしたもんかとしばらく考えこんでいた。 と、そこへ。 「おっ!獲物一号発見!行くぞ鉄夫!!」 「ほいほいさ~♪」 意気揚々とした声が聞こえたと思った直後、穏やかだったBGMが突如激しいバトルBGMへと切り替わった! どんっ! 俺の目の前で凄い速さで緑色のPCがすっ飛んで行った。 そして緑色のPCは必殺技的な何かを叫びながら 大鎌をふるい、複数のモンスターを一気に薙ぎ倒す! 「す、すげー…!」 俺は思わず声を上げていた。 緑色のPCは、若葉色の地肌に白いタテガミとふさふさの尻尾を生やし、獅子にも狼にも見える顔つきの筋骨たくましい獣人キャラだった。 その獣人キャラが大鎌をふるう度にモンスターがのけぞり、吹き飛び、ついには力尽きて消滅する。 あっという間にモンスターは全滅し、フィールドに再び穏やかな音楽が流れ始めた。 「お疲れ~シューリン♪さすがだね~僕の出番無かったよ~」 少し離れて様子を見ていたPCが獣人に駆け寄ってゆく。 こちらは人間型で、藍色の帽子と服の何だか地味な男キャラ。手に杖を持っている。 「鉄夫、やっぱりこのエリアじゃ敵弱すぎだ。全然経験値たまらないし、つまらないぞ」 「あはは~そうだね~。でもまぁ、今回はレベル上げぢゃなくて、アイテム探しに来たんだから、我慢、我慢。敵弱い方が僕も楽できるしぃ♪」 「…ぬぅぅ、仕方ないかぁ…」 獣人は不満げな声をもらしつつ歩み出した。 そして、倒れている俺の頭を踏みつけた。
/623ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3179人が本棚に入れています
本棚に追加