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筋肉で引き締まった脚を十分に冷やし、オムホロスはたちあがった。
ふくろのなかでごそごそと昆虫がうごめいている。握りこぶし大のカブトムシや、手のひらよりも大きな蛾がふくろのなかにひしめいている。これをえさにしてべつの生き物をおびき寄せてもよかった。
しかし、思い直す。キメラがきてしまうだろう。やはり純血種をさがさねば。
オムホロスがぼんやりと水辺で考えこんでいると、性質のおとなしいキメラが集ってきた。
クジャクとキツネザルのキメラ。人と犬と蛇のキメラ。蝶とハチドリとトカゲのキメラ。
オムホロスを恐れない、ひとなつこいキメラたちが、水辺でたわむれはじめた。
人の体をもつメスキメラがオムホロスにしなだれかかってくる。
オムホロスはメスキメラのなめらかな蛇の尾をなでさすってやった。
ネクアグアの繁殖期はまださきのことだった。
オムホロスとて、その時期は石殿から一歩もそとにでられない。
あやうく交尾の相手にさせられそうになったのも一度や二度のことではなかった。
人の頭部をもつキメラたちの生殖器を、魔法使いはユーモアのつもりなのか、歪めてつくりあげていた。
発情したキメラどうしが、血まみれになりながらつがっている場面を幾度となく目にしてきた。
キメラたちが生物的に正しい行為がゆえに滅んでいく姿をみて、オムホロスは複雑な気持ちになった。
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