~朔良(さくら)~

5/7
前へ
/59ページ
次へ
毎日のように連絡は取り合っていたのだが、別に付き合っているわけではなかった。一緒に食事に行ったり、映画を見たりドライブしたり……。 “特別仲のいい友達”という関係だった。 そんなある日、朔良からの連絡が突然途絶えた。 俺がいくら電話してもメールを送っても全く返事が返ってこない。 徳井「どうしたんやろ?」 俺は気になって、朔良と一番仲のいい友達の野波さんに聞いてみた。 野波「朔良なら実家に帰ってますよ」 徳井「えっ、そうなん?」 俺は少しホッとした。 徳井「けどなんで?」 野波「………。」 少し間があった。 野波「三日前に朔良のお母さん… 亡くなったんです」 徳井「え……」 野波「それで朔良ショックから立ち直れないんだと思います。あたしも何度か連絡取ってみたんですけど、全然取れなくて…」 徳井「そうやったんか…」 俺は野波さんに礼を言い、マンションへと帰った。帰り道俺はずっと朔良の事を考えていた。 お母さんが亡くなった……それはかなりの打撃だっただろう。 (“朔良を支えてやりたい…”) 俺は心の中でそう思った。 それと同時に俺は朔良に電話をかけていた。 プルルル… プルルル… プルルル… 何度もケータイを鳴らす。が、出ない。 プルルル… プルルル… プ… 朔良「……もしもし?」 繋がった!! 徳井「あっ、もしもし?俺やけど…」 朔良「義実ちゃん? ゴメン。電話出れんくて…」 徳井「気にせんでえぇで★」 朔良「………。」 徳井「………。 朔良?」 朔良「ん?」 徳井「大丈夫か?」 朔良「………。」 返事はなかった。 ただ確かなのは、電話の向こうで泣いているということだった。 朔良「………会いたいな」 徳井「え?」 朔良「今から会えん?」 珍しく朔良から誘われた。 徳井「ほな今から迎えに行くから。家で待っとき?」 俺はソファに脱ぎ捨てていた上着を手に取り玄関のドアを開けた。 徳井「……………えっ!!?」 玄関を出ると、朔良が立っていた。 徳井「ど、どうしたんッ?!!」 朔良「ビックリした?ちょっと驚かしたろ思うて(笑)」 朔良はそう言いながら笑っていた。だがその笑顔は本当の笑顔ではないことぐらい、俺でも分かった。
/59ページ

最初のコメントを投稿しよう!

63人が本棚に入れています
本棚に追加