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煉華は水蓮の姿を確認すると、他の女中を知らせに走る。
でもなぜ…水蓮は我の二つ名を知っているのか…?
「おや?水蓮はお前になついているのか…」
後ろを振り返ると30代半ばの男性が立っている。雰囲気が水蓮に似ている。この男性こそ水蓮の父・劉心。月詠を式神として召喚した張本人だ。
「娃蓮も采貴も廉貴もなつかなかったからな…」
「劉心…お前がこいつに二つ名を教えたと言うなら…こいつに式神をつける時…我がいく…」
天照の思いがけない言葉に劉心は驚いたが、うなずいた。天照…いや月詠がついていればその命に代えてでも必ずしも水蓮を守ってくれると劉心は思ったのだろう。
「天照…」
「その名はやめろ…お前から貰った名が気に入っている」
“月詠”とは劉心が与えた二つ名。真名は神将・天照…誰もが忌み嫌う最凶にして最強の神将。劉心は水蓮につく事を承諾した。
『…う~ん…つくよみ~?』
水蓮は目をこすりながら体を起こす。彼女に向ける月詠の視線はとても穏やかで温かささえ感じた。それからだろう。月詠の姿が見えないと水蓮は泣きじゃくり小さな体で広い屋敷中を探すようになったのは。
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