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「とにかく水蓮…外は冷えるから部屋に入れ」
水蓮は頬を膨らましながら部屋に入り、火鉢に火を灯し円座に腰を下ろした。月詠は部屋の隅に腰を下ろす。
『やっぱりあたしのこと避けてるじゃない?』
「水蓮…そんなことはないと言っている」
子どもは皆我に怯え近くに寄ろうともしない。だから自分も近寄らない。だが水蓮は違う。怯える事もなく、純粋に我に近付いて来た。こんな風にごく普通に接する。
『お父様とは普通に接してるのに…』
「それは…!」
月詠は膝を立て言いかけた所で口を閉ざした。いつになく寡黙な月詠が声を荒げたことに水蓮は目を見開いて月詠を見ている。
生涯ただ一人の主、この命に代えてでも守りたい愛しき人。
月詠は過去に一度だけ死の瀬戸際に陥り倒れた劉心の前に立ちはだかり全身に傷を負いながらも、命掛けで彼を守った。が、その結果彼は主の前で一度死んだ。今の姿は生まれ変わった姿なのだ。
神将は神の末席に名を連ねるが、不死ではない。人間より丈夫ではあるが致命傷を負えば死ぬ。戦闘要員の月詠・宇津萌も例外ではない。でもそれは死ではなく転生。無垢な状態で異界に誕生する。
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