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案の定水蓮は風邪をこじらせた。宇津萌から冷たい視線を向けられながらも月詠は水蓮の部屋に向かう。
水蓮は毛布にくるまり寝ていると思いきや、予想に反して起きていた。また宇津萌に怒られる事が増えてしまった。
「水蓮…風邪を引いているのだから寝ていろ」
『…う……ん…』
廊下に座っていた水蓮は立ち上がったが、ふらついて倒れそうになった。
「…くっ…!」
ギリギリのところで月詠の腕が水蓮の体を抱き締め倒れずにすんだ。体が熱い所を見ると、熱は下がるどころか上がっている。
月詠は水蓮を抱き抱え、部屋に入り布団の上に下ろす。
「水蓮…?大丈夫?」
月詠が振り返ると、水蓮の姉・娃蓮が氷枕と薬を持ってやってきた。
今でこそ慣れてきたが、まだ月詠を見ると娃蓮は恐怖感があった。
「我は廊下にいる」
娃蓮にそう告げ、水蓮の部屋から出ようとした。だが、水蓮が月詠の手首を掴んで放さない。風邪で意識も朦朧としているはずなのに力がこもっている。
「いいのよ天照…気にしないでそばにいてあげて」
娃蓮は水蓮の頭の下に氷枕を敷き、薬を枕元に置くと足早に部屋を出て行った。
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