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水蓮は娃蓮が出て行ってもなお腕を放さない。でもしばらくすると、水蓮の手から力が抜ける。
月詠はしばらくそのまま水蓮のそばに片膝を立て座っていた。規則正しく呼吸を繰り返し眠っている水蓮。
そのすべてが愛しい。
すべてを守りたい。
「………!?……」
段々眠気に襲われる。視界がぼやける。水蓮の近くに何か黒い影が見えた。黒い影は水蓮を抱き抱え、姿を消した。
「す…い……れん…」
月詠の意識は途絶えた。
「……らす!…てらす!天照!!」
目を覚ますと宇津萌の姿が目に入った。体を起こそうとするが、腕に力が入らない。
「天照…水蓮様は!?」
宇津萌の言葉で部屋を見渡すが、水蓮の姿はない。
「水蓮!!……っ…!」
まだ意識が朦朧とし、足に力が入らず、膝をついた。
「強い霊力を感じて…それで来たらあなたしか…」
宇津萌は顔を逸らした。
黒い影だ。
あの時水蓮を追ってきた黒い影に水蓮は連れさられた。
「…ヤツだ…」
「ヤツとは…天照…心当たりがあるのですね!?」
問い詰めてくる宇津萌を後ろに、月詠は部屋から出て夜の街中に消え去った。
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