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「天照!!」
宇津萌は去って行く月詠の通力の跡を追うが、あまりに早過ぎて追跡できなかった。
宇津萌は劉心のもとへ急いだ。
「劉心様!水蓮様が何者かに連れさらわれました!月詠がそれを追って…」
「わかっている…今胡蝶を追わせる…」
胡蝶とは劉心が月詠の次に式神として従えた神将。風を司る神将は竜巻を巻起こし、月詠の跡を追った。
「月詠…」
宇津萌は天照ではなく二つ名の“月詠”と呟いた。
犬猿の仲であるはずなのに二つ名である月詠と呼んだ。それは月詠…天照が今の姿に生まれ変わる前、二人は唯一無二の親友だったからだ。
共に異界を駆け回り、永きに渡り同じ時代を過ごしてきた。だがその記憶は月詠にはない。
「宇津萌、すぐに月詠を追うぞ」
劉心の言葉に宇津萌は沈黙を以て肯定とした。
「…天照…いや月詠…来たか…」
月詠の姿を認め、黒い影が笑みを浮かべる。
「やはりお前か…須佐…」
黒い影は月明りの下に姿を現す。漆黒の短髪に、灰褐色の瞳。黒衣の霊布を身に纏い、立っている青年。
その横にはまだ熱を帯び荒い呼吸を繰り返す水蓮が横たわっていた。
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