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水蓮の名を叫んだが、声が出ない。水蓮に近付きたいが、体が動かない。
足元を見ると蔦が膝まで這って、手まで伸びる。須佐の力は植物を操る力。
抑えていた通力を解放し、全力で蔦を払おうとするが、なかなか離れない。
「無駄だよ…火の属性に強い水の属性だからね」
「では風はどうかしら?」
声とともに月詠の周りを疾風が吹き抜ける。疾風は蔦を切り裂き、須佐目掛けて吹いていく。
「胡蝶…」
月詠の前に降り立つ宇津萌よりも一回り華奢な体付きの少女。短な裾の着物を身に纏い、白い足をのぞかせる。
紫色の瞳は月明りで淡い桃色に輝いて見える。
「勘違いしないでよ…劉心の命で来たんだから」
胡蝶は仕方なさそうに月詠を向き返るその後ろから蔦が胡蝶目掛けて飛んでくるのが見えた。
「くっ…!」
月詠は立ち上がり、胡蝶の背中を押し飛ばす。蔦は月詠の全身に絡まり、きつく絞まり、月詠は気を失った。
「天照!?」
「…お前を人質に天照を呼び寄せるつもりだったが…自ら飛び込んでくるとは……好都合」
須佐は蔦を手繰り寄せ、ぐったりした月詠を肩に抱え、暗闇の中へ消え去った。
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