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俺、水無月 悠。
難関と言われた桜林学園の狭き門を突破し、四月から通う…はずだった。
『えぇぇぇぇぇぇ!?名前がないぃぃ!?』
クラス分けに俺の名前はなく、一人トボトボ家路につこうとしていた。
広いこの敷地から出ようと門に向かう途中、地面にうずくまる少女を見つけた。
『大丈夫ですか!?』
少女に駆け寄り、声を掛けると少女は顔を上げた。
―メッチャ美人…!―
整った顔にサラリと長い金髪がかかり、美しさを際立てていて、まさに“大和撫子”と呼ぶにふさわしい。
「見てわかりませんの?足を捻って歩けませんの!」
前言撤回!
美しさのみ大和撫子…。
少女は右足に手を添えている。その手の下は赤く腫れていた。
「探している人は見つけられない上、足を捻るなんてついてませんわ!!」
『誰か探してるの?』
「えぇ…水無月さんを」
少女の言葉に耳を疑った。今少女は“水無月”って悠の名字を言った。
『もしかして…水無月さんって水無月 悠?』
「ご存じなんですの?」
ご存じも何も自分本人だなんて…言うべきだよな?
『それ…俺の名前…』
少女は目を丸くして悠を見つめた。
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