プロローグ

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  その後同じ大学に入学した二人は、気ままなキャンパスライフを共に満喫した。 親のすねをかじり、滅多に授業には出ずに、一日中遊んでは寝るだけの生活を繰り返していた。 その頃から、カメラマン志望だった今城は、叔父から譲り受けた古ぼけたライカを使って奈々美の写真を撮り始めた。 その写真は、彼女な写った現存するものだけでも軽く四桁はいくというほどに多かった。 大学卒業後、今城が就職してからもも二人の間柄は途切れることはなく、今城は仕事の合間を見つけては、奈々美の遊びに付き合った。 そのため今城はスーツ姿のままデートに来ざるを得なくなり、また奈々美はいつになってもその姿を非常に可笑しんだ。 営業二年目の今城は、腰を落としてお辞儀をする姿も、すっかり板についてきていた。 「私はアクセサリーを作る人になりたいのよ」と時折デートの最中に奈々美は夢を語った。 作品を見せてほしい、と今城が懇願すると、 「でもまだ勉強中なの」と、ただいつも話はその言葉でしめられた。  
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