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(市立△×中学校)
時、同じくして、卒業式。蒔田藍(マキタ アイ)は別れを惜しむ仲間達の中で、いっそう騒がしく、ひときわ目立っている。
「あーもぉ、泣くなって!太郎。高校も一緒だろ?スマイル、スマイルv(゚∀^*)」
卒業式ムードに涙する、友達を笑いながら慰めている。
「…藍。お前にはわからないだろう。…この…片思いのやるせない気持ちが…!」
どうやら、太郎が嘆いているのは、好きな娘と離れ離れになるかららしい。
「そんなに好きなら、その娘に告っちゃえばいいじゃん!…らしくねぇぞ?うじうじ悩む太郎なんて…」
あっさり、さっぱりと言う藍には何の悪気もない。
「…」
「俺なんか、今日。呼び出し食らいまくりだよ?茜ちゃんに、、優実ちゃん、七海ちゃんと…。あ!さっきなんか、菜美も俺の事、好きだったとか冗談言われちゃって…」
「…っ!」
笑って話す藍に、深刻そうな顔をする太郎。
「まさか、告られると思わないから…。ちょっと動揺した(笑)」
「…。藍、お前、ホントに鈍いなぁ…。」
「え?」
太郎の言葉の意味を理解できない藍。
「菜美かぁ…。高校に行ったら、もっといい女探さなきゃなぁ…」
溜め息を漏らしながら、少しすっきりした顔で言う太郎。
「え?…えぇーーっ?!」
「お前らしいけどな…」
「太郎の好きな娘って…菜美?」
「あはは。…ちなみに菜美の好きな人はオレ様だ」
鈍感な藍に諭すように言う太郎。
「え!じゃあ、両思い?…さっき片思いって…」
「…。ホントに鈍いなぁ(笑)、藍。……菜美は、どうしてこんな奴に惚れたのか…。」
半ば、呆れ気味に言う太郎。
「?…え!だって冗談だって…」
「言ったものの、怖じけづいたんだろ…。藍にはラブラブな年上の彼女いるし…。」
「…ラブラブかなぁ?」
恥ずかしそうに、それでいて不思議そうに、頭を掻く藍。
「…まぁ、とりあえず。カラオケでも行くか?藍のおごりで!(笑)」
「は?何で、おごり?」
「失恋パーティーだぁ♪」
そう言うと、ふっ切ったように走り出す太郎。釈然としないものの、明るさを取り戻した太郎に安心した様子の藍。
「卒業記念って事で…おごってやろう♪」
少し先を走る太郎に追い付くと、桜並木を肩を並べ、はしゃぎ出した。
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