90人が本棚に入れています
本棚に追加
降りしきる雨の中で、藍は傘もささずに、子猫を抱き上げる少年を見ていた。◇☆高校の生徒らしく、制服は同じである。顔はさすがの雨でぼんやりとしか見えない。少年は子猫にボソボソと何か言ってから、そのままクルっと向きを変え、来た道を戻っていく。
「あ…」
声を掛けようか迷っていると、少年は足早に走り出した。藍は、ボー然と後ろ姿を見つめていた。
「藍っ!…こんな雨の日にびしょ濡れになって…。傘忘れたとかじゃないよな?」
遠くから藍の姿を発見した太郎が走ってくる。
「…うん。忘れちゃった…」
ふざけた表情を浮かべながら、藍は言った。
「…いくら、鈍いからって…。雨の日に忘れないだろ?フツー…何かあったの?」
「じ…実はね…」
「う、うん…」
少しためらいながら、言いづらそうにしている藍を、真顔で見つめる太郎。
「…。内緒だよ?」
「う…うん。」
「…朝から生理になっちゃって(>_<)」
「そっかぁ…そりゃつらいなぁ…。Σって、お前いつから女子になったんだよ?」
「あはは(笑)高校デビュー?」
「何だよぉ…真面目に聞いたのに…」
一連の冗談にうなだれる太郎。
「ゴメン(笑)大丈夫だよ。ありがとう、太郎。…ホントは朝からボーッとしてただけだから。」
申し訳なさそうに謝る藍。一度、段ボールの位置を振り返り、また太郎と騒ぎ始めた。
最初のコメントを投稿しよう!