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律が高校に到着したのは、入学式が始まる10分前だった。途中で麻里に会ったものの、麻里が両親と一緒にいる姿を見ると、丁寧に挨拶をして、引き返したのだった。
「…。小林…」
クラス発表を見ると、1組に名前を見つける。女子を見ると、麻里は別クラスのようだ。少し安心したように溜め息をつく律。急いで教室へ向かうと、すでに生徒は移動を済ませているようで、黒板に『体育館に移動。席は前から順に座ること』と書かれていた。
律が会場に入ると1組の列に並ぶ。最後尾には大声で、はしゃいでる男子生徒がいる。
「藍~。」
律は『あい』と言う名前に反応する。呼び掛けられたのは、同じく男子生徒だった。
「腐れ縁だなぁ…同じクラスなんて…」
話し掛けられ、藍は少し困惑しながら、意地悪そうに言った。
「クラスの席が遠いのが救いだよな、マジで。」
意地悪そうに返す太郎。
「良かった。『か行』に姓を受けなくて(笑)」
「良かった。『ま行』に姓を受けなくて(笑)」
藍の言葉をオウム返しする太郎。律は『あい』という響きを気にかけながらも、はしゃいでる男子生徒達の後ろに座る。やがて、開会の言葉が述べられ、穏やかに厳粛な式が始まった。
それぞれの思惑を、まだ交えぬまま……
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