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数日後
「もう行くのか?」
「これ以上、エンマに迷惑掛けたくないから。」
「そうか。」
冥界、エンマが住む裁罪宮(さいざいきゅう)の南門。ここから先には“時の海”に通じる水晶がある。
そこを通って人間界に行き、クライムの新しい生活が始まる。
「髪とか服、有難う。助かったよ。」
「あのままでは、見ていられないぐらい酷いからな。これぐらいは当たり前だ。
ほらっ!さっさと行け。聖霊が待ちくたびれているぞ。」
「そうだね。」
クライムは外で待っているシャチの元に走って行った。
エンマはそれを見届け、仕事場に戻ろうとした。
「エンマ!!」
しかし、それをクライムが止める。
何かと思い、エンマは振り返った。
「あの時は本当に有難う。気持ちが楽になったよ。」
「あの時?」
「私のこと、守ってね…。協会からも…恐怖からも…」
「!」
それを言うと、クライムはシャチに乗り、空に向かって飛んでいった。
「あやつ…聞いていたな…」
溜め息を吐くエンマだったが、その表情は穏やかだった。
「当たり前だろう…クライム。」
-END-
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