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私が満身創痍で防波堤の頂上まで着いたころには、トウゴはその上で器用に三角座りをしていた。 「これが見たかった」 そう、トウゴは言った。確かに、それはすごく綺麗だった。砂浜で見たときよりも、ずっとずっと。遠くまで見える海に、光の粒がかかって、ゆらゆらと揺れている。私は酔っていたので、その景色はよけいに神聖に見えるのだと思った。 慎重に立ち上がると、もっと遠くまで見えた。あの向こうに、となりの国でも見えるかもしれない、と本気で思った。 トウゴも立ち上がった。そして、わたしの肩を掴んだ。キスでもされるのだろうか、そういえば、トウゴとはキスもまだだったのだと、私は朦朧とする意識のなかで呑気なことを考えていた。 トウゴは結局何もせず、何も言わなかった。そして、その代わりに強く、掴んだ私の肩を突き放した。 そのまま私は、海に落ちた。一瞬、トウゴの顔を見たが、表情まではうかがえなかった。
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