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「葉平、十二年前に私がこうして言ったこと覚えてる?」
小枝は、まちに背を向けて言った。
「ああ、『あの木のように、ずっと此処に居たいね』だろ」
「覚えててくれたんだ!」
「そりゃ覚えてるさ」
小枝は、まちの方へ向いた。
「このまちも変わったね」
「そうだな。俺も、此処までどうやって変わったのかわからない。けど、あの木は全部知ってるんだろうな」
今度は葉平がまちに背を向けた。
「十二年前と同じこと言ってんね」
「覚えてたんだ」
「もちろん。覚えてるよ」
小枝は、少し間を空けて続けた。
「ココで、葉平と一緒にまちを見たのが、今までの私の一番の思い出だもん」
「俺もだ」
ある、春の陽気が気持ち良い昼間。十二年間の時を越えて、2人の友情はさらに深まった。
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